OBSESSED with BABYMETAL

BABYMETALのライブレポートや雑感・考察などのブログ

               

BABYMETAL サマソニ2015東京 ライブレポ

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1.

「ECHOSMITH、意外と良かったですね」

「歌うまかった。最後まで観てもよかったかも」

「ヴォーカルの子って現役女子高生なんでしょ?」

「らしいね。SU-METALと一緒だ」

「あ、MOUNTAIN STAGEは今、誰がやってるんでしたっけ?」

「んー、andropが終わったころで、次はMARMOZETSだったと思う」

「急いでご飯食べて観に行きます?」

「いや、今回は見送るからいいよ」

 

QVC MARINE FIELD AREA、通称「ソニ飯」の一角に屯する3人。
対面には後輩のK山くん。
彼の横には女性のS川さんが座っている。
僕たちはテーブルを囲み、少し遅めの昼食をとっている。

 

今年もやってきた「SUMMER SONIC 2015」。
僕個人は3年連続での観戦だ。

 

音楽はもちろん、環境や食事など、会場を丸ごと楽しめるのがフェスの醍醐味。
都市型フェスのSUMMER SONICは交通の便もよく、洋楽好きからJ-POP好きまで客層は幅広い。
名前だけは知っていたけど実際に音楽を聴いてみたらかなり良くて気に入ったり、
まったく知らなかったバンドに出会い、興味を抱いて好きになったりするのも享楽の一つ。
そして2年前、なんとなく覗いたRAINBOW STAGEに初めて見る彼女たちはいた。
今や世界中を飛び回って活躍しているBABYMETALの3人だ。

 

しかしそのときは後方から眺めていただけだったので、
姿形もさることながら歌やダンスの印象は薄く、
今でも鮮烈に覚えているのはその異質ともいえる「音像」だった。
ラウドながらタイトで、音圧レベルもそれなりにあり、PAのバランスもまずまずだったから、
前方から音塊の津波を、それも何度も浴びせられるような感覚を味わった。
あのときは爆音の中で「なんだこれは」と終始混乱し、
呆然と立ち尽くしたままジッとステージを静観し続けるだけだった。
そしてその後しばらくは、頭の中から「音」や「映像」が離れることはなかったのだった。

 

最近のアイドルには興味がなかったがゆえ、彼女たちを受け入れるまでに多少の葛藤はあった。
しかし生演奏・生歌の余韻はいつまで経っても消えることがなかったから、
徐々に彼女たち、とりわけライブパフォーマンスの素晴らしさに心惹かれていった。
果てに数ヶ月後には、さくら学院や可憐Girl’sにまで手をのばすほどハマってしまっていた。
そしてその後の彼女たちのライブでは、常に体を動かして心底熱狂しまくっている。
「SUMMER SONIC 2013」がBABYMETALにハマるきっかけとなったのは紛うこと無き事実である。

 

それから一年後。
初のWORLD TOURを敢行した直後に参加した昨年の「SUMMER SONIC 2014」では、
ステージはMOUNTAIN STAGEに格上げされ、ライブパフォーマンスも各段にレベルUPしていた。
そして激しいダンスの中に、彼女たちの「余裕」を観て感じ取れることができた。
それは間違いなくSonisphereやHeavy Montrealといった大舞台を経験したからであろうが、
一回りも二回りも大きく成長した彼女たちを見て大変心嬉しく思ったのを記憶している。
会場の様子はというと……、言わずもがな、終始異様な盛り上がりだった。

 

そして2年連続MOUNTAIN STAGEに出演する「SUMMER SONIC 2015」。
当初、僕は行く予定ではなかったのだった。
なぜなら法事で都合をつけるのが難しかったからだ。

 

K山くんはというと、僕が前々から参戦は厳しいと言っていたこともあって、
彼は知り合い3人(男1人、女2人)の計4人でサマソニに行く予定を立てていたのだった。
しかし2人(男1、女1)の都合が急に悪くなったらしく、
1週間ほど前に突如慌ただしい様子で僕に声をかけてきたのである。

 

「先輩! すみません、『代打』で登場願います!」

 

2人で行ってくればいいじゃないかと返事をしたものの、いくら知人とはいえ、
結婚を間近に控えたS川さんと2人きりで行くのはちょっと気まずいと、
だから僕にも来てほしいと無理やり頼み込んできたのだった。

 

ううむ、どうしたものか……。

 

僕は熟考に熟考を重ね、翌日、仕方なしに返事をした。
「わかったよ。田舎から1日早く戻って行くよ」
小さく吐息を零しながら低いトーンで言葉を繋ぐ。
「あと『代打』ってなんだよ。野球でもやるの? 『代打』じゃなくただの『代わり』だから」

 

予定を変えることに抵抗はなかった。
SUMMER SONICに行きたくないと思うはずもない。
しかし、それでも返事を渋ったのには理由があった。
それはK山くん以外の人物、S川さんの存在に他ならなかった。

 

K山くんが僕を指さし、得意げに笑みを浮かべる。
「先輩、『代打』でしたけど、来てよかったでしょ?」

 

だから「代打」じゃなくて「代わり」だって。
そう言い返そうとした矢先、K山くんは言うや否や無我夢中でねぎ塩からあげ丼を頬張りだした。
かなり空腹だったのか、その食いっぷりはとても野生じみている。
視線を逸らすと、S川さんが頬杖を突いて横を見ていた。
彼女の視線はK山くんのがさつな食べっぷりに注がれていた。

 

あーあ、ご飯粒を飛ばしまくって……。
ほんとにもう、どうしようもない奴だな。
ほら、S川さんも呆れて見てるじゃないか。

 

あのさ、もうちょっときれいに食べろよな。
そう指摘しようと思って眉を顰めたときだ。
不意にS川さんが「K山くん、とても男らしい食べっぷりね」と言って微笑んだものだから
僕は目を丸くしてしばらくのあいだ固まってしまった。
「え、どこが? 汚いだけじゃないか」頭の中ではそんな思考が延々とまわっていた。
やはり僕と彼女とでは、感性から性格までまったく相容れないようだ。

 

S川さんとは面識があった。
K山くんの昔からの知人ということで、何度か会って会話もしたことがあった。
しかし彼女に対する印象はあまりよくなく、できれば会いたくないなと思っていたのだった。
それにはいくつか理由があった。

 

まず、僕は彼女の派手な服装と化粧が苦手だった。
彼女が時折見せる妖艶な微笑みや仕草は計算としか思えなかった。
だからそんな彼女に僕が欲情することはなかった。
そもそも僕は清楚で控えめな女性がタイプなのだ。

 

中学生のころは理科室の人体模型にムラムラしまくった僕だが、
まるで人形のような派手なまつげエクステとアイシャドウの
彼女にムラムラすることはなかった。
それどころか彼女のあざとさに僕はイライラを募らせるばかりだった。

 

次に、僕は彼女の不躾なところに不快感を抱いていた。
以前にK山くんも含めた数人で飲みに行ったことがあったのだけれど、
彼女は酔うといきなり僕を呼び捨てで呼び始め、
挙句には「君って猿そっくりね」と言い放ったのだった。

 

そりゃあ僕は猿顔であることは認めるけれど、
関係の浅い人にいきなり言われたくはない。
僕はモンキーの一つも言い返したい気持ちになった。
いや、文句の一つの間違いだ。

 

様々なことがふと脳裏を過ぎり、僕は貝のように口を閉ざして黙ったままでいた。
しかしそんなときに限ってしきりにS川さんがこちらに話しかけてくるようになった。
僕は「釜玉うどん」に箸を伸ばしながら彼女の話を聞き流していた。
うどんだけに内心ではそろそろ話のコシを折りたいなと思いながら。

 

「職場の近くにおいしいイタ飯屋さんができたの」
S川さんが小鼻を膨らませながら言う。
「遅くまでやってるし、帰りに行ってみましょうよ」
なんでも味はS川さんのお墨付きだとのこと。
しかし彼女と一緒に行けば、僕にとってはどの店も曰く付きのお店になってしまうのだけれど。

 

やがて食事を終え、ふと時計を見ると、時刻は午後13時15分だった。
「じゃあ、そろそろ」僕たちは揃ってメッセ方面へ向かう。
シャトルバスは待つのが面倒だから歩いて行く。
真夏の日差しが頭上に容赦なく降り注ぐ。

 

ホールに入り、暗いソニ飯エリアを進む。
SIDE-SHOW MESSE、IDOL SONICのPassCodeを少しだけ遠目に眺める。
SONIC STAGEのCIRCA WAVESが良くてしばし鑑賞する。
MARMOZETSが終わったタイミングでMOUNTAIN STAGEへ移動する。

 

ALL TIME LOWが始まる前に少しでも前に行こうかということになり、
僕たちは、ステージから20Mほど離れた柵付近に陣取る。
周りを見やれば、多くのBABYMETAL TEEを来た人を見かける。
彼女たちが出演するフェスではすっかりお馴染みの光景だ。
ライブが本当に楽しいから彼女たちはフェスでも人気がある。

 

やがてALL TIME LOWのステージが始まると、ファンであるS川さんはすぐにノリノリになった。
「Satellite」のサビで悲鳴に近い絶叫声をあげている。
途中、英語が分かるのを確認したうえで、ファンの女性が1人ステージにあげられたのだけれど、
アレックスにハグされて舞い上がったのか、まるでサンドウィッチマンの富澤のようだった。
彼女はちょっと何言ってるのかわからなかった。

 

その後彼らは「Kids in the Dark」などを披露し、「Dear Maria, Count Me In」で終了。
ラウド・エモ系はたまにしか聞かない僕だけど、知っている曲が数曲あったこともあって、
臨場感溢れる洗練された生のライブパフォーマンスには予想以上に感銘を受けた。
途中に何度か圧縮があったけど、BABYMETALで慣れているのであまり苦にはならなかった。

 

ALL TIME LOWのショーが終わると一気に人が増えてきた。
周りを見やると、多種多様なBABYMETAL TEEを来たメイトたちが目に付く。
年齢層は相変わらず老若男女幅広い。
柵前の小規模なピットエリアには、見慣れた顔の中に混じって若い女の子の姿も複数ある。
数人程度だが、その中には外国人メイトの姿もあった。
さすがに前方にはいないようだが、後方には小さな女の子の姿もたくさんあるのだろう。
僕の網膜はカップルは認識できない仕様になっているから、残念ながらそれらの数は分からない。

 

しばらくして神バンドが登場すると大きな歓声が上がった。
大観衆が固唾を飲んで見守る中、「いいね!」を演奏しながらのサウンドチェックが続く。
音が止むと、ここぞとばかりに、「ゆいちゃーん」「もあちゃーん」「すぅ様ー」、
図太い声に金切り声と、あちこちから掛け声が飛ぶ。
会場の熱気はぐんぐん上昇し、まるで蒸し風呂の状態となった。
開始前からすでに汗だく。
BABYMETALの登場はまもなく。
まだかまだかと心臓は早鐘を打ち始めている。
そしてムービーがビジョンに流れ始めると、会場のボルテージは一気に最高潮に達した。
これがBABYMETALのライブ。
狂喜乱舞の熱狂渦巻くショーになることはハナから分かり切っている。
さあ、今日も彼女たちの完璧で最高なステージングを、皆で心ゆくまで堪能しようではないか。

 

 

2.

セトリ

01. BABYMETAL DEATH
02. メギツネ
03. ド・キ・ド・キ☆モーニング
04. あわだまフィーバー
05. Catch me if you can
06. ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト
– ムービー
07. Road of Resistance
08. ギミチョコ!!
09. イジメ、ダメ、ゼッタイ

 

1曲目の「BABYMETAL DEATH」が始まると、僕はすぐさまトランス状態に陥った。
この曲はいつだってイントロから僕の脳内にドーパミンを過剰に分泌させる。
圧縮はきついが、それでも可能な限りヘドバンし、「DEATH! DEATH!」と声を張る。
前方エリアでは早くも激しいモッシュが始まっている。

 

クロスした腕から垣間見えるSU-METALの眼光は相変わらず鋭い。
その視線にゾクゾクしながら、僕はいつものごとく目を見開き、フリーズする。
片や、MOAMETALの小悪魔的な微笑みには、思わずこちらも笑みを漏らす。
凛としたYUIMETALのすまし顔を見るたびに心は何度も奪われる。

 

続く曲は「メギツネ」。イントロが流れるや周りはすでにお祭り騒ぎ。
「ソレ! ソレ! ソレ! ソレ!」と踊り狂い、直後に激しいモッシュで喜びを全身で表す。
圧縮の波に耐えながらヘドバンしていると、いつのまにか僕は柵の前まで流れていた。
サッと柵にへばりつき周りを見る。他の2人の姿はない。離ればなれになってしまったようだ。
だけどこれは最初から予期していて3人で示し合わせていたので、僕はライブに集中する。

 

音圧はそれほどでもないが、轟音が鳴り響いている。
6月のライブのときもそうだったが、この会場に優れた音響バランスは最初から求めていない。
そもそも位置的に爆音であれば周りのメイトたちと一緒に大熱狂はできる。
だから僕はSU-METALの声の調子やPAのバランスには意識を持っていかなかった。
数万人規模のライブでは、細かいことは気にせず愉しむことを優先させている。
特に「メギツネ」は、最初から最後まで「ノル」ことに全身全霊を捧げている。

 

続けざまに3曲目は「ド・キ・ド・キ☆モーニング」。
イントロで大歓声が上がり、多くのメイトがフリコピを始める。
SU-METALの笑顔と歌声が可愛い。3人ともダンスのメリハリが効いている。
熱狂の中、曲は続き、やがて3人が寝そべるシーンへ。
ほとんど身動きが取れない状態ではステージを凝視することしかできない。
昨年は一度で起き上がれなかったYUIMETALだが、今回はスムーズに起き上がれたようだ。
(記憶が曖昧なのでもしかしたら昨年起き上がれなかったのはMOAMETALだったかもしれない)

 

さあ次は何だ? 期待を胸に構えていたところで流れてきたのは、刺激の強いデジタル音。
おそらくは多くのメイトたちが前日までに「キツネ祭り」の映像を見たからだろう、
「あわだまフィーバー」のイントロが始まると会場のボルテージはさらに上がった。
全身でリズムを取りながら、血眼になってステージ上の3人を凝視する。
この曲の最大の魅力はなんといってもシンクロする3人の可愛らしいダンスだ。

 

「あわ~あわ~」のところでは、片手で輪っかを作るのが精一杯だった。
とにかく3人とも可愛い。一瞬たりとも見逃せない。
そして振り付けは違うのだが、ロヂカ!?の「デルタ」のダンスを彷彿させるような、
おそらくはタイムマシーンに乗って時空を飛んでいるところを表現していると思われる、
間奏の、SU-METALを中心とした三角形の立ち位置になってのダンスに見惚れる。
ああ、なんてことだ。
曲、ダンス、表現力。
すべてが素晴らし過ぎて、感動し過ぎて、自然と目頭が熱くなる。
最初のブート音源からアレンジされたこの曲は、
僕の中ではすでにお気に入り度の高い曲になっている。
繰り返し観ても、この先かなりの期間、飽きることはないだろう。
いや、そもそもBABYMETALの曲は全て簡単に飽きられないように丁寧に作り込まれているのだ、
音源が出れば、この曲も他の曲同様、ほぼ毎日聴き続けるだろう。

 

大盛況の中「あわだまフィーバー」が終わると3人がステージから一旦ハケた。
それはつまり、「Catch me if you can」の始まりを告げることを意味する。
神々の面々がお立ち台に上がると、会場全体から大きな歓声が上がった。
藤岡神から順に超絶テクニックのソロパートが始まった。

 

大村神が、海外ライブでその国の国家を演奏する箇所で、
聞いたことがあるようなメロディを弾いた。
その瞬間にはその曲が何なのかはわからなかった。
あとで知ったのだが、どうやら彼が弾いたのは「りんごの歌」だったらしい。
だとすると、終戦記念日の今日のために考えて選曲したのだろう。

 

BOH神の速弾きライトハンド奏法、青山神の荒れ狂うドラムソロに続き、
「ハイ! ハイ!」と甲高い声を発しながら3人が再びステージに現れる。
前方エリアでは早くもサークルピットが始まっている。
男女関係なく、みんながみんな、幸せそうな顔をしてぐるぐる回っている。

 

ギターのザクザク音があまりに心地良い。自然と頭が揺れる。
この曲の3人のダンスパフォーマンスの魅力にはいつだって目を見張る。
やがて大盛り上がりの「Catch me if you can」が終わると、
フェスのセトリでは記憶のない、「ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト」が始まった。

 

SU-METALがいつにも増して掛け声を張ると大観衆は負けじと応える。
「セイッ!」「キンキラリーン!」
ミッドナイトではない時間帯だが、メイトたちのウキウキ感やワクワク感は天井知らず。
会場全体が1つになって心底楽しみ、やがて曲は終了した。

 

ノンストップで続いたライブが一旦ここで途切れる。
それは次曲「Road of Resistance」のムービーが流れ始めたからなのだが、
よく見ると、いつものSENGOKU WALL OF DEATHの映像ではないことに気付く。
それは彼女たちのこの2年間の軌跡を振り返ったものだった。
再びメタルマスターに導かれ、Reading and Leeds Festivalsへの出演が表示されると、
前もって分かっていたメイトたちのあいだから大きな歓声が上がった。
そして続けざまに、不穏な空気を聴く者に感じさせる、ホラ貝と陣太鼓の音色が流れてくる。
「Road of Resistance」の前奏が始まると、前方にあっという間にサークルが出現した。

 

3人の「1! 2! 3! 4!」を合図に、激しく体をぶつけ合うメイトたち。
僕は変わらずほとんど身動きが取れない状態だったので、
前方の激しいモッシュに時折目をやりながら、ずっと小刻みに頭を揺らし続けた。
そしてsing-alongでは、掠れ始めていたのもなんのその、一緒になって大声を張り上げた。

 

間奏のダンスを注視し、再びマイクを握るSU-METALに意識を向ける。
「命が続く限り、決して背を向けたりはしない」
ここからの旋律とリズムはいつだって鳥肌が立つ。
SU-METALに続き、文字通り大声で「shout!」する。
ドラムのブラストビートで思わず昇天しそうになる。
記憶が飛びかけていたのでよく覚えてはいないが、
今回は「かかってこいやー!」のような絶叫はなかったと思う。

 

怒涛の勢いのまま、高揚した余韻がまだ残る中、
曲は「ギミチョコ!!」へと畳みかけていく。
これは「メトロックレポ」でも触れたが、
良い意味でこのコンボは本当にタチが悪い。否応なく熱狂してしまうからだ。
BABYMETALの楽曲は人体に害のない麻薬のようなもの。
各曲に対する称賛の言葉は幾つも思いつくが、
体感したことをまとめて一言で言い表しなさいと言われれば、
「痺れる」という言葉を選ぶ。
僕は頭をガンガンに揺らしながら、果てはトリップしたような感覚に陥った。
しかしすぐに意識は覚醒することとなる。
そうさせたのは、意表を突いた、3人の可愛らしい生の声だった。

 

それは途中のコール&レスポンスのときに起こった。
3人が1つのマイクに向かって「シンギン!」と声を発したのだ。
それからすぐに再び3人で今度は「サンキュー」。
3人ともたまらなく可愛い笑顔。
その瞬間、僕の心は、焼き立てのホットケーキの上に乗せたバターのように、
あっという間に熱をジュウジュウ発しながらとろけていった。
3人が楽しそうにしているのを見るだけで心がとても温かくなる。

 

疾風怒濤の勢いで過ぎていったライブは、気が付けばもうラスト曲。
「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の冒頭ムービーがビジョンに映し出されると、
瞬く間に柵の向こう側、前方エリアにサークルが出来上がっていった。
SU-METAの「ルルル~」に合わせ、目の前はケチャの嵐。
各自やりたいことを好きにやればいいと思うし、ケチをつける気なんてさらさらないが、
「メタルサウンドにそれは合わないんじゃないか」と常々思っている僕は、それは控える。
途中、SU-METAの声が裏返ったように聞こえたが、そんなことは特に問題ではない。
彼女たちの頑張りに負けないように最後まで全力で完走して楽しむことができるかどうか。
それこそが問題だ。
BABYMETALのどのライブにおいてもそれは当てはまる。
彼女たちに敬意を示すには、不測の事態でも起こらない限り、
僕たちメイトは途中で脱落するわけにはいかないのだ。
なぜならBABYMETALのライブは常に戦いであるのだから。

 

最後の力を振り絞って僕はダメジャンプを繰り返す。
ツインギターの奏でるメロディにグッと唇を噛み締める。
YUIMETALとMOAMETALのバトルシーンを畏敬の念を持って眺める。
後方の視界は一切わからないが、会場全体がTHE ONEになっているのを確信する。

 

曲が終わり、恒例の「WE ARE BABYMETAL」コールで〆ると、
彼女たち3人は満足気な笑みを覗かせながら退場していった。「SEE YOU!」
「SEE YOU!」枯れた声で僕も返す。興奮はしばらく冷めることはないだろう。
極上のエンターティメントである彼女たちのライブは今回も大盛況ののちに幕を閉じた。
ライブの終焉とともに体のあちこちから痛みが出てくるのはいつものことだ。問題ない。

 

会場を出てから、途中にはぐれていた2人と合流する。
BABYMETALのライブを始めて観たS川さんは大満足している様子だった。
K山くんは嬉々とした表情で僕に話しかけてきた。
「今日も凄かったですね! めちゃ楽しかったです。先輩はどうでした?」

 

僕は小さく唸ってからこう答える。
「おへそが見えるセクシーな衣装を、今度3人で挑戦してみたいな」

 

しばし微妙な空気が3人を包み込んだ。

 

「えっ、先輩、何言ってるんですか」
ややあって、K山くんが眉間に皺を寄せて言う。
「気持ち悪いんですけど」

「バッカじゃないの?」
語気を強めるS川さんは目を吊り上げていた。
「あたしだけならともかく、なんで君たちまでセクシーな衣装を着るのよ」

 

「そうだよね。僕とK山がおへそ出したところで仕方がないよね」
僕は言葉を取り繕いながら2人の前を歩き出した。

 

彼ら2人のリアクションを思い出しながら、
そりゃあSU-METALもMOAMETALも苦笑するよな、と思った。
YUIMETALがまさかあんなことを言い出すなんて思いもしなかったが、
キラキラした目で言っていたので本意なのだろう。
もしかしたら数年後、衣装に反映されるのかもしれないし、されないのかもしれない。

 

たった今合流したばかりだったけど、それぞれ見たいのが違うということもあり、
ここから2人とは別行動することになった。
僕は少しだけ休憩すると、1人で再びMARINE STAGEに向かった。
ARIANA GRANDEのステージを初めて生で観るために。
正確には、ARIANA GRANDEのステージを生で観るであろうYUIMETALと
同じ空間で少しでも喜びを分かち合おうという目的のために。

 

初めて生で体感するARIANA GRANDEのステージは驚きの連続だった。
まず、ショーが完成されている。
まさか演奏がオーケストラだとは思ってもいなかった。
ダンスパフォーマンスは唯一予想の範疇だったが、
ARIANA GRANDEの生歌のうまさ、レベルの高さは、予想の数段上をいっていた。

 

途中何度かLブロックのアリーナから舞台の奥の方を観察したけど、
BABYMETALの3人の姿を見つけることはできなかった。
これはあとからTLで知ったことだが、どうも彼女たち3人は、
反対側の舞台の袖からちゃんとARIANA GRANDEのライブを観ていたようだ。
きっとYUIMETALは心底喜んだのだろう。興奮の極に達したに違いない。
胸の前で手を重ねるボヤけた彼女の画像を眺めながら、僕も嬉しさを隠しきれずにいた。

 

そういえば「ギミチョコ!!」のコール&レスポンスのとき、
SU-METALの「スクリーム!」、MOAMETALの「みんな、楽しんでるー?」のあと、
YUIMETALは「アリアナ、最高!」と言っていたように、最初は聞き間違えてしまった。
ゆいちゃん、ライブ中なのに、頭の中はARIANAのことで一杯なのかと思ってしまった。
しかしそれはどうも、YUIMETALの願望に対する、僕の勝手な想起による勘違いだったようだ。
正確には彼女は「サマソニ、最高!」と言葉を発していたのだった。

 

その後、ISLAND STAGEで、台湾のデスコアバンド、FLESH JUICERを少しだけ観る。
MARINE STAGEに戻りTHE CHEMICAL BROTHERSを途中まで観覧してからメッセに向かう。
最後はMOUNTAIN STAGEの大トリ、MARILYN MANSONのライブに足を運ぶ。
途中、FACTを観ていた2人と再合流し、僕たちは会場を後にした。
SUMMER SONICといえば夏の代名詞。
今年もいろいろとアツかった。
大満足のもと、僕の3年連続の真夏の観戦は終わった。
熱気で火照っていた体に吹きつけてくる風はいくぶん涼しいものだった。

 

 

3.

「今日は楽しかったですね。たくさんバンドを観れたし」

「そうだね。ほんと楽しかった。あっという間だったよ」

 

最寄駅に向かい、電車で都内まで戻ると、
僕たちはS川さんの勧める「イタ飯屋」で軽い打ち上げを行った。
3人でテーブルを囲み、サマソニの話で盛り上がる。
自然とBABYMETALが話題の中心となった。

 

改めてBABYMETALのライブを振り返ってみようとするが、
久々に圧縮エリアで観戦したというのもあって、なかなか鮮明には思い出されなかった。
だいいち、どのくらいの人が会場に詰めかけていたのか、後方はほとんど見えなかったから、
観衆の全体像もまったく把握できていなかった。
だから本稿のヘッダー画像にも使用させていただいた、
公式の超満員の会場の様子の画像を目に留めたときには、
あまりの凄まじさに思わず絶句してしまった。
そしてなるほどと得心した。
入場規制がかかっていたほどギュウギュウ詰めの状態だったのだ。
あの熱気は、確かに6月の単独ライブを彷彿させるものだった。
開始直後からTシャツはおろか下着まで汗でびしょびしょになったのだから。

 

同じMOUNTAIN STAGEでも去年は7曲だったのに、今回は時間も少し増えて9曲を披露。
最初から最後まで大興奮&大熱狂のステージを、観客と共に3人は走り抜けていった。
次に出演するときは間違いなくMARINE STAGEになるだろう。
熱中症対策などの心配もあるが、運営はそう判断せざるを得ないのではないだろうか。

 

「国内外問わずどのフェスでもBABYMETALは目玉のアクトとなるだろう」
メトロックレポでは、僕はそう記した。
「これほどまでの熱量を発するライブパフォーマンスは比類なく素晴らしいものであり、
狂気の沙汰のようなエネルギーに満ち溢れたライブはそうそう体験できるものではない」
続けてそうも記した。
毎回毎回こうも凄まじいライブパフォーマンスを見せつけられると、
近い将来、BABYMETALは、どこかのフェスのヘッドライナーを務めるのではないか。
謙虚で節度を持ったKOBAMETALはすぐには引き受けないだろうが、
そういった望む声が関係者の間から聞こえてくるんじゃないかと思えるほど、
今回のライブも圧倒的で、最初から最後まで息つく暇もないほど大変な盛り上がりだった。
そしてあの「痺れ」を求め、僕はこれからもBABYMETALのライブに足を運び続ける。
残念ながらZeppTourは4次先行まですべて外れたが、オズフェスのチケットはもう確保している。

 

ちなみに昨年はライブ中に「WORLD TOUR 2014」の追加公演の発表があったのだけれど、
今回は「Reading and Leeds Festivals 2015」の再告知のみだった。
年内は全国ツアーだけに力を注ぐ。それは確定事項なのかもしれない。

 

 

「僕に誘われてやっぱりよかったでしょ」
K山くんがにやけながら言った。

 

僕は眉を八の字にして答える。
「まあ、来てよかったとは思うよ」
本心はオブラートに包んだ。
誘ってくれてありがとう、本当に楽しかった!
そんなことを言えば彼が図に乗るのは見え見えだったからだ。

 

K山くんが意気揚々に続けて言う。
「でしょー? 『代打』でしたけど」

「だからその表現は間違えてるって」

「まあいいじゃないですか。『代打』でも」

「別にいいけどさ。というか、『代打』と言ったら僕じゃなくて……」

 

あれっ、代打といえば誰だったっけ?
ふとそんなことを考えているときだった。
視界の端で、こちらを見ているS川さんの姿を捉えた。
不本意ながら、どうも彼女は僕を凝視しているようだった。

 

アピールする気なんてまったくなかった。
だいいち相手は僕とはウマが合わないあのS川さんなのだ。
しかし僕は無意識に箸を動かすと、一心不乱にパエリアを頬張りだしていた。
眉間にきつく皺を寄せたまま、無言で米やら具やらを口の中に掻き込んでいった。

 

ややあって、S川さんが声をあげた。
「あのさ、君の食べ方」

 

顔を上げると彼女と目が合った。
僕は微妙に目を見開く。
淡い期待を寄せた表情だった。
いったいぜんたい、僕はどうしちまったというのだろう。

 

刹那、S川さんが続けて言った。
「すごく汚いんだけど」

 

「えっ」
口を開いた直後、僕の思考は一瞬停止した。
それからゴホッゴホッと咳込んでしまい、慌ててグラスに手を伸ばした。
ゴクゴクと水を喉に流し込む。頭の中は混乱をきたしていた。
あ、あれっ!? K山くんのときは違った反応だったのに……。

 

ティッシュで口元を拭い、ふーっと小さく息を吐く。
なんとか心を落ち着かせようとする。
少しでも女性に褒められたいと密かに願う、モテない男の悲しい性に僕は支配されていた。
だがしかし、そういった僕の邪な考えによる行動は、今回も完全に裏目に出てしまった。

 

S川さんは、「そんなことより」と言っておもむろに鞄の中から手帳を取り出すと、
これにお祝いの言葉を書いてくれとせがんできた。
どうも彼女が愛用しているシステム手帳のようだ。
訊けば結婚式は来月だそうで、何でもいいから書いてくれとのことだった。

 

僕は一呼吸置いてから思考を巡らす。

 

そりゃあ結婚はおめでたいことだし、 多くの人から祝いの言葉も欲しいのだろうけど、
友達でもない僕に、しかもシステム手帳に書き込ませることはないじゃないかと少し呆れた。
けれど問答無用に強要されたので、 僕は箸を置くと彼女のシステム手帳を受け取った。

 

開かれたページには「結婚おめでとう」だの「末長くお幸せに」だのといった
定番の祝いの言葉が書き込まれてあったが、中には、
「夫婦円満」や 「一期一会」「一家団欒」といった言葉も記されいた。

 

なるほど。四字熟語的なことを書けばいいのか。
そう思った僕は、こっそり余白の部分に「代打八木」と書いてやった。

 

結婚は神様にも祝福されるものだから、代打の神様からの祝福もあればさらに喜ぶと思うんだ。

 

頁を閉じ、満面の笑みで僕は彼女に手帳を返す。
受け取る彼女も幸せそうな笑みを浮かべている。
僕が何を書いたのか、可能な限り、気づかずにいることを祈る。
結局のところ僕と彼女は最後まで相容れないようだ。