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OBSESSED with BABYMETAL

BABYMETALのライブレポートや雑感・考察などのブログ

さくら学院 2014年度 卒業式 観覧レポート

さくら学院(卒業式・ライブ等) さくら学院

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「卒業してからがスタートだから、でもなんか、不安になった時は、
さくら学院の一緒に協力したメンバーとか、さくら学院で学んだことを
ちゃんと思い出して、不安になってもみんながいるなって思えるから、
きっと、大丈夫です。うん。頑張ります」

 

 

1.

約束の刻限が迫っている。
それは「成長期限定」ゆえに訪れる「卒業」という無情な原則。
しかし卒業生たちは、それが確かな一歩を踏み出す門出であるとちゃんと理解している。
寂寥を覆い隠す大いなる決意を胸に、いざスーパーレディへの道を歩もうとするのである。

 

今年に入ってから、多くの媒体、公開授業、Logirl、ライブ等で各々卒業生は吐露してきた。
さくら学院への純粋な想い。
在籍中に成長できたと実感する具体的述懐。
先生方、父兄、関わりのあったすべての人々に対する感謝の念。
卒業後の目標、先代の卒業生たちへのリスペクト等々。
まだまだ伝え足りないと本人たちは感じているかもしれないが、
彼女たちの溢れんばかりの真摯な思いは十分に確実にこちら側へ伝わっている。
だからあとは、塵ほどの後悔も残さずにすべてを出し切って完全燃焼してほしい。
僕の思量の中心にあるのは数晩前からずっとそれだけだった。

 

 

さくら学院にハマったきっかけはBABYMETALだった。
畢竟、それは必然の理だった。

 

 

BABYMETALのルーツを探ればすぐにさくら学院に辿り着く。
さくら学院の歴史を追求せずしてBABYMETALのすべては語れない。
そして、その道を辿った人は皆すぐに察知する。
さくら学院が如何に素晴らしいかということに。

 

さくら学院をアイドルの枠で図れば実態を見落しかねない。
優れた楽曲が多いことにはすぐに気付くが、その範疇を超えた妙妙たる点が存在するからだ。
それは文字どおりさくら学院が「学校」であるが所以。
そこでは、スーパーレディの礎となるあらゆるカテゴリーを教育する。
こと芸能界に限定すれば「才媛を育み開花させる機関」と称しても過言ではないように思う。

 

生徒たちは様々なことに挑戦して、感受性・個性を磨き、
複雑で難度の高いダンスフォーメーションも習得する。
1曲ごとに歌詞の意味を理解し、それをライブパフォーマンスで表現する術を覚えていく。
しかし全員が揃って高度に実現させるにはそれなりの時間が必要不可欠である。

 

今年度は心を一つにするのに時間がかかったと、
ことあるごとに3年生たちは口々にしていたが、
それはやはり、最古参の菊地最愛と水野由結の2人を欠いて臨んだ8月の「TIF2014」、
厳密に言えば、課外活動の影響によってそれまでの1ヶ月強の間に、
メンバー全員が顔を揃える機会が少なかったことが一因であったであろう。

 

課外活動で北米大陸をバスで遠征する最中、水野由結が、
最終学年の年に「TIF2014」に参加できずに悔し涙を零した話は、
今でも父兄やメイトたちの間で語り草となっているが、
彼女たちが「TIF2014」に執着していたのは、
なにもそれが大きなアイドルフェスだからといった理由ではなかった。

 

春に2人の転入生(倉島颯良、岡田愛)を迎え入れ、
ダンスのフォーメンションも歌のパートも変わり、
新たなメンバーと一心にレッスンを重ね、本来であれば、
父兄以外の多くの人に新生さくら学院を観てもらう初めての舞台が「TIF2014」だったのである。
だがしかし、最上級生でありながら、一番の古株でありながら、
ましてや菊地最愛はみんなを束ねる生徒会長という重要な役職でありながら、
その場に立つことすら叶わなかった。
当時のことを振り返り、今でもメンバーに対して申し訳なく思うと語ったのは、
責任を果たせなかったことに対する悔恨以外の何物でもないだろう。
誰のせいでもないことは理解しているが、もやもやした感情の落としどころが見つからず、
日記に記すことで多少は発散したかもしれないが、しばらくはうまく消化できずにいたようだ。

 

しかも2人は、さくら学院のシステムを誰よりもよく理解していた。
これまでに多くの先輩が卒業するのを見届けてきたから、
さくら学院で過ごす限られた時間がとても大切なものであることを知っていた。
初年度のさくら学院が初めてイベントに参加したのも「TIF2010」であったから、
だから2014年度のさくら学院の初陣となる「TIF2014」に参加できなかったことは
2人にとって慚愧に堪えないことであり、結束するのに時間がかかってしまう結果にもなった。

 

しかしながら、幸いにも同月中に@JAM EXPOにさくら学院が参加し、
メンバー同士で心を通わせて一つにするきっかけとなったことは大変大きな事由であった。
横浜アリーナのストロベリーステージで、大勢の初見の観客を前にして、
顔中汗だくの水野由結が曲間のMCで、「さくら学院はまだまだこんなもんじゃありません」
と爽やかに、嬉しそうに喋っていたのが未だに強く印象に残っている。
そしてそこからの半年の間に、メンバー全員の心は徐々に一つになっていき、
回を重ねるごとにライブパフォーマンスの完成度は高まっていったのだった。

 

果てに本日、2014年度色のさくら学院の集大成となる卒業公演と相成る。

 

感涙してしまうことは最初からわかりきってはいるが、ここは父兄の初心に立ち返り、
なるべく最後まで平常心で彼女たちの勇姿を見守ることを心がけようと思う。
ステージを通じて父兄たちへしっかり思いを届けたいと願う彼女たちの心情を鑑みれば、
受け止める側としてはそれがあるべき姿勢であろう。

 

 

 

2.

TLによると、早朝から物販の長蛇の列ができているとのことだった。
サイン入りの写真集や生写真の販売が行われているのだから当然の成り行きであろう。
しかし僕は当初の予定どおり昼食を済ませてから家を出た。
今回は最初から物販エリアには寄らないと決めていたからだった。

 

愚図ついた空模様を仰ぎながら最寄駅へ向かう。
今にも降り出しそうな気配が曇天から漂っている。
傘を取りに一旦引き返したほうがよいだろうか――、思わず悩む。
アンバサかメローイエローのどちらにするか同じくらい悩む。

 

最悪な場合は現地調達すればよいだろう。
結局、そのまま電車で目的地へ向かう。
開場までの時間を代々木公園で過ごしていると、やはりと言うべきか、
持ってくれと願っていた天候が徐々に崩れて小雨がぱらつき始める。
NHKホール方面へ足早に歩を進めながら辺りをきょろきょろ窺う。

 

誤算だったのは、コンビニはおろか雨宿りできる場所がほとんどないことだった。
公園だからそうなのだが、それにしても屋根のある建物が近くに全くないからかなり焦る。
ありえない。
古いアニメでオニギリを追いかけて山を転がり落ちるシーンぐらいありえない。

 

それでもなんとか露店小屋の庇下などで雨を凌ぎ、開場までの時間を待つ。
渋谷駅方面から、ダークなスーツに身を包んだ23年メタラーさんが歩いて来るのが視界に入る。
「心からこんなにハッピーになれたのはベビーメタルとさくら学院がはじめてなんだ」
3日前の彼のインタビュー動画が脳裏を過ぎり、思わずふっと笑みを零す。

 

果たして開場時刻となり、いざ一般入場列の最後尾へ。
周囲を窺ったところ、性別は男性7割、女性3割といった感じだろうか。
年齢層はご年配の方から幼子(多くは女の子)まで幅広い。外国人父兄の姿もちらほらある。
あちこちで正装した父兄の姿が散見される。半数以上はいるだろう。

 

今年で4回目となるさくら学院の卒業式。
僭越ながら列席するのは今回が初めてであったのだけれど、
しかしホール内に入るや強烈な既視感に襲われた。
ほかでもない、過去の卒業公演映像を何度も観ているからであろう。
刹那、祝意の表面に不安がひょいと顔を覗かせるような、一種の落ち着かない心境に陥る。
しっかり見届けたい、笑顔で見送りたいと強く思ってはいるのだが、交喙の嘴の食い違い類同、
庭の日陰に残された雪塊のように、心の片隅に一抹の寂しさが残存していることは否めない。

 

ステージは2段式だった。セットの両端に階段が備えられている。
後方には特大ビジョンが設置されている。2階席なのでありがたい。
舞台全体に数多く配置されたネオンがとてもカラフルだ。
右側の壁には、巨大なパイプオルガンが荘厳な姿で、
「さあおまえたち、しっかりとその目に焼き付けるのだ」
と観客を睥睨するかのように佇んでいる。
元からの意匠だが、今日の卒業公演に相応しい舞台効果であるように感じられて仕方がない。

 

影ナレが始まったのは定刻をちょっと過ぎたあたりだった。
本日の主役である3年生の声が順番に響き渡ると会場はたちまち騒然となった。
ライブを待ちわびていた純粋な歓声の中に、微かなどよめきが孕んでいるように感じられる。
まだ訪れないでほしいと思っていた彼女たちの卒業公演が遂に始まってしまう――。
万雷の拍手の中に、抑えがたい痛切な思いが嘆息として吐き出されているようにも感じ取れ、
幾ばくか胸が締め付けられそうな衝動に駆られた。
が、ここは某塔盤社長の奇跡的な無茶振りによって生まれた、
水野由結の新しいキャラクター「トマトくん」の名言である、
「時間は待ってはくれないんで」に倣い、大様に甘受せねばならないだろう。

 

清く正しく美しく――。

 

彼女たちが躍動するステージは唯々まばゆい。
そこに卑俗の類いは一切合切混じってない。

 

今日は卒業公演だからいつにも増して括目してその時を待つ。
今ここに、卒業生たちにとっては一生に一度の、
泣いても笑っても最後のステージの幕が上がる。

 

 

 

3.

以下、セットリスト

01. 目指せ!スーパーレディー -2014年度-
02. School days
03. Hello!IVY
04. ご機嫌!Mr.トロピカロリー
05. 仰げば尊し ~from さくら学院 2014~
【さくら学院 2014年度 歩みの映像】
06. 天使と悪魔/バトン部Twinklestars
07. Spin in the World~SKGP最終戦~/プロレス同好会
08. ピース de Check!~年度末決算セール!~/購買部
09. ミニパティ スペシャル・メドレー☆2014/クッキング部 ミニパティ
10. スリープワンダー
11. Planet Episode 008
12. ハートの地球(ほし)
13. 未完成シルエット
14. 宝物/中等部3年
15. My Graduation Toss
16. 君に届け
17. 夢に向かって
【さくら学院 2014年度 卒業式】
EN1. 旅立ちの日に ~J-MIX 2014~
EN2. See you…

 

 

始業のチャイムが鳴って客電が落ち、上段ステージの中央にスポットライトが当たると、
ややあって下から勢いよく担任の森ハヤシ先生が登場した。
刹那、会場は早くも興奮の坩堝。なぜならそれに続く1曲目を知っているからだ。
そもそも学校だから、まずは生徒の出欠確認からであろう。
「それでは出席を取ります!」に続き、森先生の「水野!」の掛け声で
「目指せ!スーパーレディー -2014年度-」が始まると、
歓声が大きなうねりとなってホール全体を揺るがした。
水野由結のアップがビジョンに映った瞬間、口元がわなわなと震え、一気に涙が込み上げてくる。
これで見納めかと不意に実感したからだった。
注目していた岡田愛の一言は、今回は「勝って兜の緒を締めろ」。
いかにも歴女らしい彼女に合った台詞だ。

 

冒頭の合唱を省いた「School days」では、自分の花を咲かそうと明るく歌い上げ、
続く「Hello!IVY」では、生徒たちが大きく手を振りながら若々しく躍動する。
「せーの、イエーイ!」のところで岡田愛だけが大きくジャンプしていたのが印象的だった。

 

そして間奏での「父兄の皆さん、準備はいいですかー?」を合図に、
父兄たちが一斉にピンクのフラッグを取り出し、上下左右に大きく振り始める。
まるで門出を祝福するため桜が花弁を咲き狂わせているかのように、
または新たな船出を暗示するが如く、ピンク色をした大海原の海面が祝いの漣を立てるように、
忙しなく勢いよく、1階全体でさくら学院の校章をあしらったフラッグがはためく。
「あっ」と自分の失態に気付いたのは、これら壮大な景色を俯瞰して感動しながら、
「じゃあ2階も負けずに」とジャケットの内ポケットに右手を忍ばせた時だった。
あろうことか、僕はフラッグを家に置き忘れていた。
ああ、しまった! うわあ、やっちまったと後悔しても時すでに遅し。
筆箱を忘れて試験に臨んだような心境だ。こんなことあってはならない。
コンソメポテチを食べた直後にメガネのレンズを触るくらい絶対にやってはいけない。

 

あっという間に3曲が終わり、MCが暫時の暇を与えてくれる。
その間に冷静さを取り戻す。
が、そこは諧謔を弄するまでに成長したトーク委員長。
野津友那乃がライブビューイングに触れながら、
「のんきにポップコーンを食べながら観てるんでしょうね」と言って、
僕を含めた多くの父兄たちに笑みをもたらした。
それから間髪入れずに磯野莉音が「でも」と口を挟んで畳みかける。
「映画館のスクリーンって体が横に太って映るんだよ」
「じゃあダイエットでもやりますか。肥満気味と感じている父兄さんも一緒に!」
と繋げる野津友那乃。そして「ご機嫌!Mr.トロピカロリー」のイントロが流れ出す。
なかなかのスムーズなMC。これには大いに感服せざるを得なかった。

 

今年度の卒業ソングである「仰げば尊し ~from さくら学院 2014~」では、
冒頭の合唱を一緒に口ずさむ父兄の姿もあった。
ロック調の軽快なリズムに乗って首を振り、ステージ上で溌剌と踊る彼女たちを見守る。
その後は「School days」の楽曲をバックに、今年度を振り返る映像がビジョンに映し出された。

 

そこでは、転入式や、菊地最愛と水野由結の2人が映像で参加した「TIF2014」、
学院祭、各種イベント、楽屋の様子、レッスン時の様子などの映像が流れていたのだけれど、
特段目を引いたのは、倉島颯良が号泣しながら部屋を飛び出していくシーンだった。
おそらくはレッスンが辛くてのことなんだろうけど、
この映像により、生徒たち全員の苦労を推知できたことは大変よかった。
やはり並々ならぬ努力があってさくら学院のライブは成立するのだと改めて思い知らされた。

 

ここからは部活動ユニット曲がしばらく続く。

 

Twinklestarsは奇麗に揃ったバトントワリングを披露し、
プロレス同好会はリングの中で熱くカッコよく歌い上げた。
「今日であなたの時代は終わります。田口さん、お疲れ様でした」
間奏の磯野莉音の台詞は哀切を含んだ会場の笑いを誘い、
バルコニーにサプライズ登場した清野茂樹アナの実況はさらに場内を盛り上げ、
田口華が磯野莉音にベルトを手渡す寸でのところで暗転となった。
「おい莉音、華にはもうこのベルトは受け取れない。わかってるよな?」
思わずうるっときてしまう素晴らしいシーンだった。

 

続いて登場するのは購買部。
ここでもまた野津友那乃の軽妙なトークが炸裂する。

 

ラスト写真集セットを仰々しく宣伝するや否や、実はもうそれが売り切れたと暴露し、
落胆する父兄の感心を再度呼び込むようにあえて溜めを作りながら、
「だけどアスマートで販売……、さ、せ、ます!」と既成事実ではない話をし、
ひときわ会場を爆笑の渦に巻き込んだ。
それから今度はオリジナルグラスの紹介を始め、
遠慮気味に予備を考慮して2個購入することを勧める白井沙樹の横で、
野津友那乃は家族の分も合わせて是非10個購入をと言ってさらに父兄を笑わせた。
トーク委員長に任命されてからしばらくは中々うまくいかずに本人は苦悩したようだが、
元々潜在能力を秘めていたのだろう、彼女のトークはその道のベテランのようだ。
間奏中にはサイン入りTシャツの入ったボールをバズーカで3階席まで飛ばし、
「ピース de Check!」を明るく可愛らしく歌い上げた。

 

続くミニパティは豪華メドレーだった。
3人が後ろ向きに連なって登場してくるシーンに大きな歓声が沸く。
歌った曲は全7曲。3人とも相変わらずダンスのキレがすごい。
本当にこれが最後になるのかと思うと勿体ないの一言に尽きる。

 

スリープワンダーでは各々の叫びが観客の心を打ち、
杉崎寧々の飼っているペットがモデルだという猫役の田口華が、
2階ステージに寝そべって、最後まで道を示すことなく、ふてぶてしく生徒たちと問答する。
来年度は一体誰がこの田口華のはまり役をこなすのだろう。興味津々の事柄だ。

 

さくら学院祭☆2014で久々に披露された「Planet Episode 008」がここでも披露される。
これには古参の父兄だけではなく、関係者席で観ていたであろう卒業生たちも
嬉しかったのではないだろうか。
松井愛莉が武藤彩未を前に得意げにステップを踏む様子がふと脳裏で思い描かれた。

 

「ハートの地球(ほし)」のリズムで父兄たちのテンションはさらに上がる。
ピンク色のポンポンを使ったダンスには目を奪われるばかりである。
歓声は、ホール全体から、わーっと音を集めてくる。
満足気な笑みを浮かべる少女たちに絶え間なく降り注ぐ。

 

そして楽しく弾けるような楽曲から一転、
ピアノが優しくメロディを奏でる「未完成シルエット」のイントロが始まる。
歌が始まるや、メンバー全員の本気度がこれでもかとステージから伝わってくる。
「バイバイ」のたびに涙腺が刺激されるのは、別れを想起させるからだけではない。
以前に水野由結が宣言した、「卒業公演では完成された『未完成シルエット』を父兄に
お見せする」といったことが目の前で現実となっているから心が打ち震えてしまうのだ。
彼女たちの一糸乱れぬ歌とダンスに、どうにも感情の制御ができなくなっていく。

 

そして続く3年生だけによる「宝物」で、父兄たちはさらに心を深く抉られることになる。
意識を集中し、可愛らしい歌声にじっと耳を澄ます。歌詞を聞き逃さないように。

 

 

“なにげないおしゃべり しゃぼん玉みたいな時間
  まだ壊したくない でも……もう行かなきゃ”

 

涙が込み上げてくると、自然と顔が歪んでくる。

 

“好きなことは好き 喧嘩もできちゃう それくらい近くにいたよね
  一緒に新しい扉を開けて 語り合った夢 叶えに行こう 仲間だから”

 

抑えきれない感情が、燃えるように瞳を火照らせる。

 

 “一秒がキラめいて 大切すぎて ずっと ずーっと このままがいい
  じゃあね、と手を振った ちょっぴり泣けちゃった
  戻れない扉を開けた日 その先にキラキラを いつかきっと 持ち寄って
  ここでまた会おうね 仲間だから”

 

 

曲が終わる。
一瞬の静寂ののち、無言の視線を注いでいた父兄たちの間から、
割れんばかりの盛大な拍手がステージの4人に送られる。

 

これを「象徴」と言わずになんと言おう。
彼女たちの心情が具現化されている歌詞なのだ。
この曲を聴いて涙を堪えるなんて到底無理な話。
目の前の視界が次第に涙で霞んでいく。

 

感動的な曲の連続で涙腺は決壊寸前であるのに、
水野プロデュース委員長が用意した次なる曲は「My Graduation Toss」。
菊地最愛だけがセンターに残ったところで察した父兄たちの多くは
この時点でもう嗚咽を漏らさずにはいられなかった。

 

ライブのセットリストを考えるとき、どの曲を、どんな風に、父兄に届けるか。
それには伝える側の目線が必要となるから、先生ではなく彼女にしかそれはできなかった。
水野由結はライブごとにテーマを決め、流れを考慮し、セットリストを考えるとのこと。
おそらくはあまり感傷的になり過ぎないように配慮した選曲であろうが、
いくらロック調の明るい楽曲であっても、多くの父兄たちが2012年度の卒業公演映像を
未だ鮮明に記憶しているのだから、どうにも哀調を帯びているようにしか受け止められず、
彼女の思惑とは裏腹に、父兄たちは、ほとんど、考えることさえできないほど、
随喜と虚無と感慨が鬩ぎ合っている渦の中に、身を任せるように深く沈んでいくだけである。
下級生に囲まれながら歌う4人の卒業生の姿もまた、長く記憶に刻まれることだろう。

 

「君に届け」では、友へ思いを届ける大切さがその歌唱から滲み出ていた。
そしてファースト曲であり、アンセムと言ってもいい「夢に向かって」が始まる。
クラーク博士よろしく、フラッグを持った右手で虚空を指す水野由結の姿が凛々しい。
10人全員が希望を胸に力強く歌い上げて卒業ライブは終了となった。

 

 

そして10分弱の準備時間を経てから、威風堂々の荘厳な音楽をバックに、
本日のハイライトである卒業証書授与式が執り行われる。
固唾を飲み、身が引き締まる思いで進行を伺う。
倉本美津留校長が卒業証書を読み上げる最中の菊地最愛の表情が会場の涙を誘う。

 

「卒業は悲しいものじゃない。スーパーレディーへの第一歩。
さみしくないといえば嘘になるけど、卒業する4人は夢に向かって頑張ってほしいです。
普段はあんまり言わないけど、言葉だけでは伝えきれないぐらい感謝の気持ちでいっぱいです。
卒業おめでとう。そしてありがとう」

 

落ち着いた口調で送辞を贈る磯野莉音。
もしかしたら大物になるかもしれないといった予感を彼女の雰囲気からは感じ取れる。
途中、水野由結が退席する場面もあったが5分ほどで戻ってきた。
急に体調が悪くなったのか、それとも何か別の事情があったのかは知る由もないが、
退席前とあまり変わらない表情にひとまず安堵する。

 

続く答辞では、卒業生一同が整列し、代表して菊地最愛がマイクの前へ。
その際、スタンドを低くする彼女の姿から、3年前のまったく同じシーン、
困惑顔でスタンドを低く直す武藤彩未を想起した父兄たちも多かったのではないだろうか。

 

「これは夢で、さくら学院生活がまだまだ続くんじゃないかと思ってしまう自分がいます」
菊地最愛による答辞が述べられ始めると、会場は水を打ったように静かになった。
「どんなときでも本当に温かい目で応援してくださったちょっぴり親ばかな父兄のみなさん。
今の気持ち、史上最高のありがとうを伝えたいと思います」
時折涙で声を詰まらせながらも、最後まで顔を上げてしっかりと話す菊地最愛。
もしかしたら泣き崩れるのではないかと心配していた父兄もいたかもしれないが、
そこは彼女の成長の証だろう、生徒会長の雄姿に会場全体から大きな拍手が送られた。

 

本人はそれによって自分らしさを出すことに苦慮したようだが、
生徒会長という重責は菊地最愛に中庸をもたらす一助となった。
もともと気配りのできる性格ではあったのだろうが、
今年度の彼女の振る舞いにおいてはそれがより顕著に現れていた。

 

続いては式辞。
倉本校長がマイクの前に立ち、卒業生たちに視線を送る。
それぞれの入学当時の印象を語り、場内を和やかな空気へ変えてから、
彼は力強く4人の成長を褒め称え、これまで頑張ってきた道のりに敬意を示した。

 

「所属した部活が、図らずもとんでもないことになり、
世界進出という渦に巻き込まれながらも、さくら学院の活動を怠ることなく、
本当にすごいなと思って見ていた。期待してるで。
遠慮せんと、思い切り飛躍してくれ。周りを気にするな!」

 

倉本校長の台詞の中で特に印象に残ったのが「オピニオンリーダー」という言葉。
彼は2、3度この言葉を繰り返していたのだが、僕にはそれが、
ややもすれば抽象的になりがちな、いや、そもそも抽象的な表現である
スーパーレディの姿の一つを暗示、もしくは示唆する言葉であったように感じられた。
菊地最愛や水野由結などは、彼女たちなりに解釈したスーパーレディのイメージ像を
持ち合わせているようだが、倉本校長が話の前後を逆にして、「これからは女性の時代」と
言っていたのはまさに真意に繋がる枕詞であり、おそらくは2人だけにではなく、
また田口華や野津友那乃を合わせた4人だけでもなく、それはさくら学院の卒業生全員に
向けて発せられた言葉であり、つまるところ、世論の先導者、先駆者となって
世界に羽ばたいてくれと遠まわしに伝えたかったのではないだろうか。
ちょっと深読みし過ぎた感は否めないが、僕は今もそう解釈している。

 

また、ここから20行ほどは個人的見解なので読み飛ばしてもらっても構わないのだけれど、
さくら学院の生徒たちによる高度なダンス、歌、MCは、簡単には他人に真似ができず、
人間はふだん10%の脳しか使わないとされるが、さくら学院の生徒たちはみな20%から
25%くらい使ってるんじゃないかと思っているといった話を倉本校長はしたのだが、
実はさくら学院の本質はそこにあるのではないかと思った次第である。

 

 

投稿者は起の部で「さくら学院が如何に素晴らしいか」と書いた。
複雑で難度の高いダンスフォーメーションも習得し、1曲ごとに歌詞の意味を理解し、
ライブパフォーマンスで表現する術を覚えていくことがそれだとも記した。

 

しかしながら、さくら学院での活動を通じて学ぶ一番大きな肝賢は別であろうと思う。
そもそも何にでも挑戦してやってみるのはさくら学院のモットーでもあるのだが、
さまざまな場面で、自ら気持ちの立ち直りができる経験を積ませることに意味がある。
そうすることで、「自己」への気づきを確実にしていき、
判断して行動する主体としての「自我」ないし「自分」を形成していくのである。
生徒単位の性格や人間性をも含めた「個性」、或いは「アイデンティティ」とも言えよう。

 

礼儀作法やモラルは親の躾、教育によってある程度身に付くだろうけど、
「人格」は家族も含めた身近な人間関係の中で、尊敬の対象からの影響によって
形成、昇華していくものだ。偉人の教えや理念から影響を受けることもあるだろう。
それが、好奇心が強く、なんでも一番影響を受けやすい年頃に、
唯一無二の特別な学校、特別な授業、特別な演目によって享受される。
倉本校長の脳に関する見解は、対象への心象によって得た印象であろうが、
対象の人格や品格の具わり具合によって抱く印象も変わると言っているように思えてならない。

 

だいたいこういった趣意は校則七ヶ条でも謳っているではないか。
多くの経験から多くの「自我」「自意識」の成長あるいは「自分」づくりを支えること。
それこそがさくら学院の存在意義であり、先生方の本質的な役割であるんだと思う。

 

 

式辞が終わると担任の森先生がマイクを握る。慣例のシーンだ。
彼はまず、彼なりの愛情表現の代名詞でもある乱暴な言葉で4人の卒業生たちを攻撃し、
そして「本番中も自分にガンガン来てくれて本当は嬉しかった」と謝意を述べた。
それから、「毎年、これから楽しくなるなって時期に卒業。
俺の感情ミルフィーユはべろんべろんです」と言って会場を大いに沸かし、
「俺の中では4人とも留年。心の卒業証書には判子は押してない」と寂しい内面を覗かせ、
「結局何が言いたいかというと、ずっと先生面させてほしい」と本音をぶちまけた。
「小さい背中に背負ってるものをたまには分けてくれ。卒業おめでとう、これからも宜しくね」
改めて彼がさくら学院の担任で良かったと再認識させられるトークだった。
彼のさくら学院に対する愛情は、見方も感じ方も違うだろうが、
自分が一番だと公言して憚らない水野由結のさくら学院愛に勝るとも劣らない――かもしれない。

 

一旦仕切り直してアンコールの2曲が始まる。

 

1曲目は「旅立ちの日に ~J-MIX 2014~」。
アンコールの1曲目として定番の楽曲だ。
美しい合唱のあと、生徒たちが声を張り上げるようにして歌う。
下級生たちとハイタッチを交わした直後のソロパートで水野由結が歌に詰まる。
「ああーっ! 由結! 顔笑れ!」
座席から身を乗り出し、グッと両拳を握り締め、僕は心の中で何度も叫んだ。

 

曲が終わり、父兄からの称賛の大拍手のあとのラストの曲は、
おそらく「FRIENDS」だろうなと思っていた僕の予想に反し、
初の卒業生を輩出した2011年度の卒業公演の最後を飾った「See you… 」だった。
最初は「えっ」と戸惑ったものの、しかしイントロが始まってからすぐに、
ああ、なるほど、そうなんだろうな、と思わず感慨に耽ってしまった。
水野由結のさくら学院愛。それは伝統を引き継いでいくことが何よりマストなのだろう。
そうすることで、愛してやまない本当のさくら学院が未来永劫残っていくと信じているのだ。
後輩に強く言えない優しい性格をした3年生が揃う中、
さくら学院の質を高めながら下級生へ継承していくために、
彼女は嫌われ役になることを厭わず、時に厳しく後輩を指導した。
「夢に向かって」を含めたラスト3曲は先輩たちへのメッセージ。
〝貴女たちから学んできたことすべてを、しっかり後輩たちに託していきます″
それは簡単なようでとても難しいことである。
もしかしたらだが、伝統をしっかり引き継いでいけなかったら先輩たちに申し訳ないと、
真面目な彼女はこの1年間ずっとプレッシャーを感じていたのかもしれない。
初期から参加の水野由結、菊地最愛、そして転入組の田口華、野津友那乃の4人は、
その責務を十分に果たし、伝統を余すことなくしっかりと下級生たちへ引き継いだ。
先生方、父兄、後輩、そして先代の卒業生たち全員がその証人だ。

 

すべてのステージを終え、生徒全員が一列に整列する。

 

次期生徒会長であろう磯野莉音が場を仕切り、まずは在校生から卒業生へのメッセージ。
岡田愛を除くほかの5人が爽やかに語ったのはとても印象的だった。
「これからも私たちのお姉ちゃんでいて下さい」
これが2011年度の卒業式を知ってたうえでの発言であるとすれば岡田愛は大したもの。
ピンと来た水野由結の脳裏に「光陰矢の如し」という言葉が過ったのではないだろうか。

 

そして特段目を見張ったのは、最後の磯野莉音からのメッセージ。

 

伝えたいことは一つだけと言って4人それぞれと抱擁した際、
最初の水野由結と2番目の野津友那乃と勢い余って頭突きをしてしまったようになったことで、
それを横から見ていた3番目の田口華と最後の菊地最愛が、近寄ってきた磯野莉音と抱き合う際、
臆したのか若干頭を引き気味にしていたのは滑稽に目に映ったが、
そのやり取りを除けば、終始堂々とした立ち振る舞いで、
最後は客席に向かって凛とした表情で背筋を伸ばし、
「これまで応援してくれた父兄のみなさん、今までありがとうございました。
来年度のさくら学院も宜しくお願いします」と締めた言葉には父兄たちも大いに感銘を受け、
いつまでも止めようとしない拍手で次期生徒会長であろう彼女を称えた。
それには多分に励ましの意味合いも込められていたのだが、それを感じ取った
磯野莉音の右頬に一筋の涙が線を引いたことはある種希少なものを見た思いだった。
天才・磯野莉音。その由来は物怖じしないところにあるが、
天才は天才でも、彼女はとても人間味溢れる天才だ。
磯野莉音が生徒会長であれば来年度のさくら学院も大丈夫。
そう思った父兄も多かったのではないだろうか。

 

そして最後に卒業生からのメッセージ。

 

「悔しい思いもして辞めたいと思ったことも何回もあったけど、さくら学院に入って良かった」
野津友那乃が殊勝に語れば、田口華は高らかに宣言した。
「さくら学院卒業とともにネガティブな自分とも卒業します!」

 

シンデレラタイムが押し迫っているということもあり、
水野由結と最後の菊地最愛の挨拶はだいぶ端折ることになってしまったが、
それでも2人ともしっかりと思いの丈を短い言葉にまとめ、
父兄たちを大いに感動の渦に巻き込んだ。
とりわけ最後の最後に菊地最愛がマイクなしの地声で「さくら学院最高!」と絶叫した時には、
会場のあちこちから嗚咽やすすり泣く声が聞こえた。
言わずもがな僕も嗚咽を堪えきれず涙が零れ落ちないように何度も天井を見上げた次第だ。

 

胸が張り裂けそうな特別な感情で退場していく生徒たちを見守る。
突如潺湲と咽び泣き始めた水野由結の姿を、僕は一生忘れることはないだろう。
よくぞ乗り切った。途中に泣き崩れることなく最後までよく顔笑った。
さあ、袖にハケてから思い切り号泣するがいい。あの日の中元すず香のように。

 

 

 

4.

感動的だったという言葉しか出ない2014年度の卒業公演が終わり、外に出る。
晴れやかな顔をしている父兄もいれば、神妙な面持ちの父兄もいる。
多くの人がまだ複雑な心境でいるのだろうが、
これはもう各々が受け入れていくしかない。だが――。
もうあの子らの制服姿は見られないのか……。
数日間は虚無感に心が支配されてもそれは矮小なことだから構わないだろう。

 

門外で23年メタラーさんを再度見かける。名前はリーさんだったか。
彼に本日の卒業公演の感想を求めようと思ったが、
なんとなく返ってくる英単語が予想できたのでやめておいた。
それよりよく見れば、彼はNHK特集で観た時の印象とはまるで違った風貌だった。
失礼ながらあの時は「落ち武者みたいな人だなあ」と思っていたのだけれど、
眼前の彼は「47RONIN」のキアヌ・リーブスのようにとても精悍な顔つきだ。
いや、これは言い過ぎか。というか、確かにクールではあるし、
わざわざ来日してきたことには敬意を示すが、さすがにキアヌ・リーブスはありえない。
古いアニメで島だと思ったら実はクジラの背中だったというオチのシーンくらいありえない。

 

帰りも電車だったが、混雑が予想される原宿駅に向かうか、
少し遠いが改札口は広い渋谷駅に向かうかでしばし逡巡する。
きのこの山とたけのこの里のどちらか一つを選ぶときのように。
結果、無難に渋谷駅を選択。公園通りを歩きながら今夜の公演を振り返る。
「まだ15歳の私たちにとってさくら学院の日々はほんの一瞬かもしれません」
泣くのを懸命に堪えながら話す菊地最愛の台詞が脳内でリフレインされる。
「だけど、それがすべてというぐらい、とても中身の濃い時間でした」

 

彼女と水野由結の2人は5年の年月をさくら学院で過ごした。
物心がついてからを境にすると、人生の半分ほどを過ごしたことになる。
そう考えれば、某雑誌でさくら学院が人生のすべてだったと語ったことも説得力がある。
それにしても、今夜の彼女もまた、一等級のアイドルであった。
レッスン中にほかのメンバーたちが鏡越しに彼女の表情を研究するのもうなずける。
父兄たちの熱視線を集めるたび、彼女は変幻自在にその表情をより一層豊かにし、
蜘蛛手にレスポンスを返しまくっていた。
年と経験を重ねながら、より大人の魅力を発揮してくれるのを今から楽しみに待ちたい。

 

大人の魅力といえば、1年前に比べると4人とも本当に綺麗になった。
とりわけ左45度の水野由結の顔がアップでビジョンに映った際には、
僕は何度も心奪われたものだった。
野津友那乃の横顔も美しく、田口華も凛とした佇まいがカッコよかった。
菊地最愛も、今日は泣き顔が多くて、でも、それはそれで美しかったのだけれど、
最近の写真で見る彼女はとても大人っぽくなっていて笑顔のキュート度は増していた。

 

ほかにライブを通して印象的だったのは、大賀咲希と山出愛子の歌唱力だろうか。
ともに声量もあり、来年度のさくら学院では重要なソロパートを2人が担うかもしれない。
また、今はまだ「ライバル」に比重が偏りがちに見受けられる山出愛子と岡田愛の関係性も、
実は中等部になってからはかなりバランスの良いものになっていくのではと推測している。
Sっ気のある山出愛子とMっ気の強い岡田愛。
「親友」と「ライバル」の顔を併せ持つ第二のモイモイ(最愛&由結)目指して顔笑ってほしい。

 

今年度の後半に急激に個性を発揮し始めた倉島颯良。特にLogirlでの変顔はインパクトがあった。
しかし周りに言わせればまだまだ変態部分の本領は発揮されていないらしい。
来年度は何にでも積極的にトライして個性を全開にしてほしい。

 

白井沙樹は、第二のプロデュース委員長になりえるだろうか。
希望的観測込みの小さな疑問だ。
もし任命されるようなことがあれば、僕は絶対に拝命すべきだと思っている。
最初は先代に相談しながらでもいいではないか。気負わずに自分のペースでやればよい。

 

そして今夜の公演を振り返り、改めて思うのは、さくら学院の名曲の多さ。
個人的に今日の公演で観たいと思っていた「FRIENDS」や「message」、
「Jump Up ~ちいさな勇気~」や「さよなら、涙。」、「アニマリズム」がなくても、
十二分に満足できる全19曲だった。

 

それから、さくら学院全体を覆う洗練されたオーラ。
彼女たちの立ち振る舞いは、まるで良家の子女のそれであるかのように感じられる。

 

そして一番触れなければならないのは、それはやはり彼女たちの「伝える力」であろう。

 

ライブにしろ、公開授業にしろ、さくら学院の生徒たちを見るたびにカタルシスを得るのは、
彼女たちがローティーン特有の清新で燦然で無垢な雰囲気を纏っているから、だけではない。
彼女たちの思いが、歌やダンスやトークから、まっすぐ真摯に心に訴えてくるから、
父兄たちはたちまち追憶にふけり、琴線に触れ、感極まるのである。
元は派生ユニットなので当たり前ではあるけれど、これはBABYMETALにも通じている。

 

 

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帰り道にTLを追っていると、卒業生たち全員の集合写真が目に飛び込んできた。
佐藤日向がUPした画像だ。

 

 

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その後に飯田來麗が投稿した写真は4人の卒業生と一緒に映っているものだった。
水野由結の泣き腫らした真っ赤な目が不憫にも思えるが、清々しくもある。

 

ついに在校生よりも卒業生の方が多くなってしまったさくら学院。
願わくば、今後どんどん生徒が入れ替わっていっても、
こうやって全員が揃う機会が何年も続いていってほしい。
なぜならば彼女たちにとって「さくら学院」は心の拠り所であるのだから。

 

 

浄土真宗の開祖である親鸞は、『浄土和讃』の中で
「畢竟依(ひっきょうえ)を帰命(きみょう)せよ」と記した。
「畢竟依」は「究極の依り所」、「帰命」とは「自己存在の全体を挙げて依る」を意味する。
要約すると「本当に依るべき究極の依り所を根拠として生きなさい」ということになる。

 

人はさまざまな依り所を持って生きている。
お金、地位、会社、恋人、家族、それから学歴、知識、体力、健康などがそれに当たる。
それらの依り所があるから、「お金や地位のために頑張ろう」などと生活に張りが出るし、
また生きていくことの目標にもなっていく。

 

しかし、お金や地位などはいつも自分の思い通りになるとは限らない。
むしろそうならないことの方が多い。
そして思い通りにならないとき、人は悩み、意気消沈する。
そしてそれが深化すれば、生きていく目標をも見失ってしまう。
生きていること自体が辛いと苦悶することもあるだろう。
なぜそうなってしまうのか。

 

それは各自の依り所が、時や状況のなかで変化していくから起こるのである。
それでは、いかなる状況でも、どのようなことが起こっても、揺らぐことのない、
究極的な依り所とは一体何なのだろうか。

 

それは阿弥陀仏であると親鸞は示した。
阿弥陀仏のはたらきだけは、状況がどのように変化していこうとも微動だにしない。
むしろ変化していく状況のなかで、ますますその確かさを証明していく。
彼は阿弥陀仏を自己存在が依るべき究極の根拠として生きていったのだ。
南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏と唱えながら。

 

 

親鸞の解釈とは幾分違うかもしれないが、卒業生も含めたさくら学院の生徒たちはみな、
「さくら学院」をこの「究極の拠り所」として今後も生きていくのだろう。

 

 

去る3月5日の「南波一海のアイドル三十六房」の番組内で、
卒業に向けての意気込みを訊かれ、田口華が答えた(36分~)のが本稿冒頭の台詞である。
虎姫一座の研修生になることがこの時すでに決まっていたのかどうかはわからないが、
おそらく決意は固めていたのだろう。
だから何度も不安という言葉が出た。
だけどすぐに気持ちを切り替え、目標に向かって頑張ると宣言した。
彼女を前向きにさせたのがさくら学院であることは、文脈から見てもわかるとおりである。

 

そしてそれは、水野由結の卒業公演最後の挨拶の言葉でも示されている。

 

「心から大好きって思える仲間もいるし、先生もいるし、卒業生もいるし、父兄さんもいる。
この先なにか辛いことがあってもこの5年間を力にして、明日から“ YUIMETAL”としての
夢と水野由結としての夢、ぜんぶかなえたいのでこれからも応援よろしくお願いします」

 

この先どんなに辛いことがあっても、どんな試練が待ち構えていようとも、
さくら学院で過ごした日々や仲間のことを思えばどんな壁だって乗り越えていける。
今年度の卒業生の未来もまた明るい。

 

 

――さくら学院を帰命せよ。

 

 

卒業生4人にこの一文を捧げて本稿を〆させていただく。
史上最高の「究極の拠り所」を心に、胸を張ってスーパーレディへの道を突き進んでゆけ。